2023/12/18

漁港のフライフィッシングに適したフライラインとは

 

Underwater フライフィッシング

漁港での対象魚は多い。アジやカマス、メバルといった定番から、セイゴや小さいクロダイやメジナ、ムラソイやカサゴ、外道扱いされるムツやアナハゼ、場所によってはソゲやイシモチなども。ウミタナゴやハタンポといった想定外の魚も掛かる。一応その時々によって狙っている魚はいるが、多くの場合は外道でも嬉しい。対象魚が豊富なソルトウォーターフライフィッシングならではであり、それこそが漁港のフライフィッシングの醍醐味ともいえる。

魚種によってそれぞれポイントやレンジも異なるし、食性も異なる。地域によってはアベレージも違ってくる。よって、釣り方やフライの種類、サイズも千差万別だ。

このように多彩な状況に合わせて都度フライラインを選択しなければならないため、どれか一本だけに絞るのは大変難しいといえる。

したがって、ここではアジやカマス、メバルといったメジャーな魚に合わせて解説したい。それぞれ適したラインを述べるが、なぜそのラインなのかという理由、根拠を理解できれば、他の魚種への応用も苦ではないだろう。

なお、あくまでも当方が嗜んでいる#4-#5ロッドといったウルトラライトソルトウォーターのタックルかつ比較的足場の低い中小規模の漁港を前提としているので、中高番手タックルや足場の高い広々とした港湾部で楽しんでいる方には少し合わないかもしれない。この場合は、ご自身の好みやエリアによって調整を行っていただくことをおすすめする(ここで述べる基本的な考え方は、タックルやエリアが変わっても普遍である)。

まずはアジから。

一本だけに絞るならフルシンキング(フルライン)またはシューティングヘッドのType4をおすすめしたい。着水後すぐに速く引けば表層付近、カウントダウンしてゆっくり引けばボトム付近を探ることができるため、釣っている最中に頻繁に変わるレンジに合わせるには、このシンクレートが適している。

アジはフルシンキング(フルライン)またはシューティングヘッドのType4を基準にして、フォローでインタミ

もう一本追加するならインタミをおすすめしたい。シューティングヘッドでも構わないが、どちらかというとフルシンクの方が扱いやすい。表層付近でプランクトンを捕食しているときは、漂わせるようにゆっくり引けるラインが必要になる。Type4でも表層を引けるが、その場合は速めのリトリーブが必要になり、漂う感じを演出するのは少し難しい。

ただし、例外はあり、表層でマイクロベイトを捕食しているときは速めのリトリーブが有効になることがあるため、Type4でも問題ないだろう。

潮が速い場所やデイゲームなどで深いレンジまで一気に到達させたい場合にType6があれば、という程度だ。

次にカマス。

夜間やマズメ時に表層付近まで上がってくることはあるが、基本的には深い層で群を作るので、そのレンジまで一気に沈めるためにフルラインのType6一択。シューティングヘッドではなくフルラインをおすすめする。カマスは概ね深い場所にいるが沖合だけでなく意外と足元にいることも多いため、足元まで探りやすいフルシンキング(フルライン)が適している。

カマスはフルシンキング(フルライン)のType6を基準に

フルシンキングだと比重の関係からたわみながら足元で上昇してくるため、カマスのレンジを長く探れる。狙うレンジと釣り人の立ち位置の関係からどうしてもロッドの角度が急になるため、一直線に斜め上に向けて上昇してくるヘッドだと途中でレンジを外れてしまう。

また、カマスは比較的速めの連続したリトリーブが効果的だが、シンクレートが低いシンキングラインは速く引くとどうしても浮き上がりやすい。シンクレートが高いラインだと、沈む速さと横(実際にはは斜め上)に引っ張られる速さが相殺されるため、リトリーブが多少速くても浮き上がりにくい。

ただし、例外はあり、堤防足元に捨て石など根がある場合は、根掛かり回避のため手前で浮き上がりやすいシューティングヘッドをおすすめする。

最後はメバル。

メバルもレンジが変わりやすい魚であり、釣り場のシチュエーションがアジやカマス以上に多彩であり、引っ張りだけでなくサイト落とし込みも多用するので、一本だけに絞るのはなかなかむずかしい。もし一本だけに絞るならフルラインのフローティングをおすすめしたい。比較的表層で釣れる魚であり、表層のエサを意識している(自分の目線より上を常に見ている)ことが多いためだ。ヤマメがドライフライで釣れやすい理由と似ているかもしれない。

メバルはフルフローティング(フルライン)を基準にして、フォローでType2

釣っている最中に群れの活性が上がってうわずってくることも多いが、レンジが少し低いと感じた場合でもフローティングラインのままウエイトが入ったフライを使用したり、その際にリーダー・ティペットを長めに取ることで概ね解決できる。

もう一本追加するならフルシンキング(フルライン)またはヘッドでType2だろう。少し深いポイントやシーズン初期でレンジが低めのときの引っ張りに重宝する。Type2を使用したとしても漁港ではせいぜいカウントは5から10程度で、アジやカマスのようにボトム付近まで沈めることはまずない。引っ張りよりもサイト落とし込みを多用する場合も、リーダーシステム全長より深い場所へ落とし込む時を想定してType2がよい(フローティングだと沈下にブレーキが掛かるため)。

ここまでの情報をもとに自分自身のスタイルに合わせて調整すれば、アジ・カマス・メバル以外の魚への応用はできると思う。

え?魚種問わずどうしてもフライラインを一本に絞りたい?

魚種問わず一本だけに絞るならフルシンキング(フルライン)またはシューティングヘッドのType3かType4

その場合はフルシンキング(フルライン)またはシューティングヘッドのType3かType4だろう。これから漁港のフライフィッシングをはじめる場合のまず一本としてもおすすめできる。

UNDERWATER ONLINEでは漁港用のフライラインを取り扱っているので、これから漁港のフライフィッシングを始めようとしている方はぜひどうぞ!

漁港FF用シューティングライン一式(ヘッド+ランニング)
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2023/06/07

南の島でのフライフィッシングによるトロピカルフィッシュ五目釣りのコツ


Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言
 

奄美や沖縄本島、宮古島石垣島など、南の島フラットでの本命はトレバリーであり、対抗としてトリガーだろうか。どちらも簡単ではない上に、ガチで狙っても遠征中に1匹も手中に収めることができないという結果になることも珍しくない。

トレバリーのクルージング待ちやトリガーのテーリング待ちで手持ち無沙汰のときに相手してくれるのが、フラットに生息する小型魚だ。多くは20-30cm程度、まれに40cm超程度のサイズということもありどうしても外道扱いされることが多いが、南の島特有の色彩豊かな魚種が楽しませてくれる。潮位が高めの場合はブラインドが主体になるが、干潮前後や状況によっては魚体を確認できるので、サイトフィッシングでも楽しめる。

ムラサメモンガラ、マトフエフキ、カンモンハタ…癒やしの五目釣り

ムラサメモンガラ、マトフエフキ、カンモンハタ、モチノウオ、オジサン、コーフ...何が釣れるかわからないのも魅力である。十数センチほどの魚もたくさんいるが、フライをかなり小さくしなければならないのと、そこまでしてわざわざ狙うほどのサイズではないのでここでは対象外としたい。

フラットにはサンドフラット、マディフラット、リーフフラット、それらの混在など、ボトムのマテリアルに応じて多彩なポイントが広がり、明るい水色も相まって魚がたくさんいるように感じる。南の島なら簡単に釣れるだろうと思ってしまうが、実際にはそう簡単ではない。 サンドフラットでもマディフラットでも魚はいるが、サンゴやウィードなどの混在ボトムを除き五目釣りにはあまり向かない。いかにもといったトロピカルフィッシュを釣りたい!と思うならリーフフラットを強くおすすめする。サンドフラット、マディフラットよりポイントを絞りやすく、魚種も豊富だからだ。おそらく皆さんの頭の中で想像している南の島での釣りのイメージそのものになるだろう。イメージは南の島での五目フライフィッシングをどうぞ!

フラットでは「変化」を狙おう

コバンアジやコーフのように移動を繰り返す魚もいれば、ムラサメモンガラやカンモンハタのように定着性の強い魚もいるのでポイントを一括りにはできないが、どちらの魚を狙うにしても最重要要素として考えなければならないのは「変化」である。

潮の流れや潮目(ウェーディングしているときに感じる水温の変化やスカムラインで判別できる)、岩やサンゴ、ウィードなどのストラクチャー、カケアガリや窪み、ボトムマテリアルの違いなど、これらすべて「変化」として捉えたい。その「変化」に潮の流れが加わっていれば一級ポイント間違いなし。潮通しの良い場所は良型の強い魚が多い。

「変化」というと何やら難しく思えてしまうが、渓流や湖でのポイントの見極めと全く同じ。南の島だとどこにでも魚がいるように錯覚してしまうので、いつも以上に「変化」を意識したい。

魚が着くのはこうした「変化」なので、フライを投入するのは「変化」に絞りたい。適当に投げても釣れないことはないが、無駄なキャストが増えることで魚が警戒してしまうのでおすすめしない。

また、ポイントに近づきすぎるのもよくなく、10メートルは離れて狙いたい。渓流以上、フラットのサイトフィッシング未満の距離感といえばイメージしやすいかもしれない。もっとも、コントロールできる範囲で距離は取ったほうが有利なことは間違いない。

ド干潮以外では魚影を確認するのが難しいことが多いのでアプローチは気が緩みがちだが、五目釣りと舐めてかかると痛い目に遭う。移動するときはバシャバシャ音を立てるのではなく、ソロリソロリと足を運びたい。活きたサンゴが多い場所では踏み潰さないように、サンゴの間を縫って歩いてほしい。サンゴの上には決して乗らないこと。このあたりは通常のフラットフィッシングと同じ。

強すぎじゃないか?と思ってしまうが8番ロッドが最適

タックルに関して。サンドフラットやマッディフラットならほぼ根もないので6番で問題ないが、いかにもといったトロピカルフィッシュが生息するリーフフラットでは8番は欲しい。リーフに生息する多くの魚種はファイト中にサンゴの穴やウィードに突っ込もうとするのと、フッキング直後のファーストランをかわすためにもバットパワーが必要だ。トレバリーやトリガーを狙っている合間の五目釣りならそれ相応のロッドを使用していると思うので問題ないだろう。

ラインはフローティング、リーダーはナイロンで全長は9-12フィート程度、ティペットはフロロ20ポンド一択でよい。経験上ティペットを細くしたところで釣果が変わる印象はない。根掛かりや根ズレ、歯による損傷を考えると魚の大きさに対して太めを推奨したい。トレバリーやトリガー狙いならティペットそのままでフライだけ変えれば済むという理由もある。なお、ド干潮あたりのスネ下潮位の場合は、クリアティップのラインもしくはリーダー長めをおすすめしたい。

ロッド8番+ティペット20ポンド+小さくても太軸のフライフックなら不意にトレバリーや大型トリガーが現れてもそのまま狙うことができるので、安心して五目釣りに専念できるだろう。

なんでも釣りたいならフックは小さめがおすすめ

フライは太軸の#8前後が理想。ゲイプ幅でいうとTMC811S換算で#8、管付き伊勢尼換算で7-8号あたりか。それより大きいサイズ、例えば#4や#2でも食ってくるフエ系・フエフキ系やハタ系のような魚はいるが、ムサラメモンガラやモチノウオのように魚体の割に口の小さい魚も多いので、特に狙う魚が定まっておらずとりあえずなんでも釣りたいなら小さめをおすすめする。

また、口の硬い魚も多いので細軸フックは避けたほうが良い。細い分刺さりは良いが、ファイト中やフックを外すときに折れたり曲がったりするのと、根掛かりした場合の回収率が極端に下がる(太いティペットで太軸のフックなら回収できることが多い)。小さくても8番ロッドを絞り込むパワーがあるので侮ってはいけない。

サンドフラットやマッディフラットではなくリーフフラットの場合はフライにガードは必須。サンゴは想像以上に引っかかりやすい。なお、エダサンゴに引っかかっているとわかっている場合は、ラインを引っ張らずに手で外しに行こう。エダサンゴはとても折れやすい。

使用するフライや狙う魚、ポイントにもよるが、スースー、チョンチョンのような喰わせの間を入れる単純なリトリーブでよい。サンドフラットやマディフラットならボトムトレースでよいが、リーフフラットはボトムを取る必要はないのでストラクチャー脇の中層を泳がすイメージでよい。

なお、リーフフラットの場合はサンゴや岩のすぐ脇を通したい(サンゴの窪みを狙う場合はエッジ付近の窪み側)。ウィードの場合も脇でよいが、ウィード上端と水面の間がある程度ある場合はウィードの真上を通すこともおすすめしたい。

魚種別のポイント違いだと、ムラサメモンガラやマトフエは砂地にウィードとサンゴや岩が絡む場所。モチノウオやオジサンもムラサメモンガラやマトフエと同じようなストラクチャーにいるが、ムラサメモンガラよりやや潮通しの良い場所を好むので、流れのあるチャンネル付近やリーフエッジに近い沖目がよい。ムネアカクチビも潮通しのよい場所。カンモンハタは潮間帯より下に多いので、波っ気の少ないやや水深のある根を狙おう(ド干潮の水深20cmでも根があれば居る)。

また、下げからド干潮はボトムの窪みに魚が溜まりやすく、上げのときはチャンネルから魚が差してくるので積極的に狙いたい。それと潮位が若干高めのときに現れる潮目付近も重要で、ゴミが集まっている筋や水温が急に変わる付近は魚が溜まりやすい。

潮位的には低めが狙いやすく、個人的にはナーバスウォーターを出しながらストラクチャー周りをウロウロするムラサメモンガラをサイトで狙いやすいド干潮潮止まり前後が一番楽しいと感じる。

きちんとターンオーバーはさせること

いずれにせよ、テーリング狙いのようにアキュラシーに神経質になる必要はないが、きちんとターンオーバーはさせたい。浅い分ループが乱れたままの着水はやはり警戒されやすいのと、落パクで喰ってくるときもあるからだ。

バイトは比較的明確で、ゴゴゴ!やドスン!という感じで手元に来るので、そのまま2-3回ストリッピングで合わせてからロッドで追い合わせするイメージでよい。バイトの瞬間にロッドを立てるとバレることが多い。このあたりはテーリング狙いのクロダイ、トリガーはもちろんのこと、湖での引っ張りと同様。リーフフラットの場合はフッキングしたらすぐに寄せにかからないと根に入られるので注意、ランディング寸前までは油断できない。

歯の鋭い魚や棘のある魚が多いのでランディング時はフィッシュグリップを使うか、余裕があればネットで掬いたい。毒魚もいるので同定できない怪しい魚がつれたら直接触らないようにしたい。

根掛かりした場合は糸を切らずに可能な限り回収してほしい。五目釣りの場合は潮位が低いときに行うことが多いので、フライを回収することは容易だ。 

ストラクチャーに逃げ込まれた場合はラインのテンションを抜いてしばらく放置していれば魚のほうから出てくるので、無理に引っ張らないようにしたい。どうしても出てこない場合は魚体を掴んで引っ張り出そう。ムラサメモンガラのように棘のある魚は棘で、カンモンハタのような根魚は胸鰭で引っかかっているので、棘や鰭を掴んで折りたためば抜ける。

なお、手で引っ張り出す場合、魚が確認できているなら問題ないのだが、見えない場合は噛まれないように注意。フッキングした魚以外にも攻撃してくる魚や毒魚などもいるので注意してほしい。少なくとも素手ではなくグローブを嵌めた状態をおすすめする。

貴重な資源なのでリリースしてほしい

それと、強要するつもりはないが、いずれの魚もリリースを前提としてほしい。特にカンモンハタのような成長が遅くテレトリー意識の高い魚に与える影響はとても大きい。

いかがだろうか。

標準的なタックルに関しては上述したとおりだが、各々好きなタックルで楽しんでほしい。特にフラットシューズを履いた状態でくるぶしくらいの低潮位の場合は5番前後の軽いラインのほうがラインインパクトも少なく場を荒らしにくい。私自身、4番のグラスロッドで楽しむこともある。

よいポイントに当たると連発するので、トレバリーやトリガー狙いの合間だけに留めず、トロピカルフィッシュを専門に狙うのも大いにありだ。観光ついでに短時間で楽しめるので、ガチ釣行がなかなか叶わないお父さんが家族サービスの合間にチョイ釣りをしたり、普段渓流しかやらない人にも最適だろう。そうした釣りなら管釣り用の5番前後のタックルで十分楽しめる。沖縄出張ついでの「出釣」にも相性がいい。

南の島での五目フライフィッシングをどうぞ!

トロピカル五目釣りに限った話ではないが、最後に注意点をひとつ。

多くの場合はレンタカー含め車での釣行になると思うが、車を停める場所に注意したい。南西諸島は観光地化が進み私有地への違法駐車や海岸への乗り入れが問題になっている(特に宮古島・伊良部島、石垣島)。首都圏近郊の漁港ほどではないが、以前駐車できた場所が駐車禁止や進入禁止になったり変化が激しい。

不安ならポイントから離れた場所でも公共の駐車場に停めるか、近くに止められる場所がないならいっそ諦めるくらいの心構えで挑んでほしい。

「ここいい感じだなぁ〜」と思っても近くに車を停める場所が見当たらないことも多いので、現地住民に訊くのもありだ。その方が釣りをする人なら有益な情報も聞き出せるかもしれない。

2022/09/20

フライフィッシングによるバチ抜けシーバス考察(東京湾奥運河筋限定のお話)

 

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バックスペースや飛距離、低いアピール度などルアーフィッシングと比較して制約の大きいフライフィッシングにおいて、スレっスレの東京湾港湾部かつオカッパリでシーバスを釣るのは難易度が高いといえる。ルアーで何度か釣った経験のある人が実績のあるポイントを攻めるのであればそれなりに結果が出るが、ルアーでのシーバスはもちろんソルトFFもやらずにいきなり港湾部オカッパリシーバスFFで結果を出すのは相当難しいと思う(ボートシーバスはイージーなので、まず1匹ならガイド付きのボートフィッシングをオススメ)。

バチ抜けシーズンはオカッパリでもっともイージーに魚を手にすることができる時期

港湾部でのオカッパリによるシーバスフィッシングにおいてバチ抜けシーズンはもっともイージーに魚を手にすることができる時期でもある。特にフライフィッシングで狙う場合、バチ抜けシーズンは絶対に見逃すことができない。シーバスフィッシングにおけるお祭りといえばバチ抜けなのは間違いないだろう。特に港湾部の運河筋で起こるバチ抜け水面勝負になることが多く、エキサイト極まりない。

ここではそんなバチ抜け時期のシーバスをフライフィッシングで狙う場合のヒントをお伝えする。

なお、ここで話すのは東京湾奥の小規模運河、具体的には東京湾の江東区〜品川区にかけての運河筋におけるバチ抜けフライフィッシングの話であり、河川(隅田川や荒川、江戸川や中川、小櫃川や養老川など)や干潟(盤州干潟、三番瀬など)のバチ抜けに関してはシーズンもバチの種類も釣り方も変わってくるため割愛する。

バチの生態やバチ抜け全般の話に関してはルアーフィッシング系の雑誌・ムックやネット上の記事が詳しいため、そちらを参照してほしい。2022年4月号の『つり人』の特集がまさに「バチ抜けから始める!春シーバス超入門」なのでぜひ読んでほしい。少し(だいぶ?)古くなるが、2008年発刊の別冊釣り人『バチ抜け地獄』はかなりの良書なので、古本で手に入るならオススメしたい。いずれもルアーの記事が基本で『バチ抜け地獄』に関してはイマドキのスタイルとは多少異なるが参考になる情報が満載なので、バチ抜けあるいはルアーによるシーバス経験のない方は読んだほうがよいだろう。

本題に入ろう。

ミミズやゴカイ、ナメクジやヒルなどの生き物が大嫌いな私が、キモいのを承知でバチ抜けシーバスにとち狂うのは、その高いゲーム性にある。もちろん、単純に釣りやすい時期・パターンだからという理由もあるが、一見簡単そうに見えてフライパターンやレンジ、アクション(ドリフト)が魚のお気に召さないとまず釣れないという、渓流のスレッカラシヤマメのライズゲームと全く同じシチュエーションと難易度を体験できることが最大の理由。ドライフライに出ても乗らず、ドリフトやフライパターンが決まったときはすんなりフッキングするという、まさにそれである。

渓流のライズゲームが好きな人なら絶対にハマる

渓流のライズゲームと同じといってしまうと「バチ抜けシーバスは難しんじゃないか?」と思われてしまうが、バチ抜け時期のシーバスは固まっていることが多く、パターンにハマれば連発するので、渓流魚より数は出しやすいかもしれない。筆者の経験だとフライパターンと魚の数・活性が高ければ、一晩でツ抜けすることは決して珍しいことではない。

他のシーズンだとルアー有利だが、バチ抜けに限ってはフライが断然有利。飛距離不要、水面あるいは水面直下勝負、フライはルアーと違ってスレにくいという点が大きい。バチをイミテートしやすいからという理由も間違ってはいないが、実はここにバチ抜けフライで皆がやらかしてしまうミスが潜んでいる。

引き波を出さないバチや釣り方の場合を除き、実際にイミテートするのはバチ本体ではなく「引き波」である。ボディの形状やカラーにこだわる前に、引き波をうまく演出できるようなパターンに注力すべきだろう。引き波をうまく演出できれば程度の差はあれどどんなフライでもバイトを誘う。これはフライに限ったことではなくルアーも同じ。

引き波系バチでの釣りは「引き波」の演出で結果が分かれる

逆にどんなにリアルにバチ本体を表現できたとしても、引き波に違和感があればバイトの数が激減する。

バチに対するシーバスの捕食を明るいところで観察するとよくわかるが、バチの後ろを着いてきてバイトするケースとバチの下から突然突き上げてバイトするケースに二分される。

この2パターンを考えると、リアフックを付けてボディ中程にもフックを付けたくなるが、これで効果があるのはフライを疑うことなくバイトしてくる場合と考えてよい。リアフックなしでヘッド付近のみにフックがあるパターンよりフッキング率は確かに向上するが、それでもバイトの数に対してフッキング率は低いままだろう。

事故的フッキングの改善はフック位置ではなくフライの泳ぎの違和感をなくすこと

多少動きがおかしくても(=スピードや引き波が不自然でも)コンディションがよいと何発もバイトを得られるが、そのような違和感を醸し出していると信じられないほど乗らない(トップウォータの釣りはもともと乗りが悪いがそれを差し引いても、である)。残念ながら引き波をうまく演出できなければフライを変えても何も変わらないことが多い。

この引き波はフライパターンによってでき方が変わってくるが、鋭角的な波、喩えるならクロダイのナーバスウォーターのような角が立った状態が好ましい。ボラのナーバスウォーターのように丸っこい波やハクの群れのようなチラチラした小さい波が出てしまうフライパターンだとバイト率が落ちる。

さらに難しくするのは引き波だけでなく動きだ。本物の引き波系バチの泳ぎを観察すればわかるが、種類よって多少異なるものの一定のスピードでジグザグに水面をすべるように泳ぐ。さすがにジグザグを演出するのは難しいが、フライを一定のスピードで引くことには最大限こだわりたい。ラインハンドだけでのリトリーブだとこれができない。

コツとしてはロッドを脇に挟んだ状態での両手でのハンドリトリーブ。ただ、運河に多い柵からの釣りだと足元がやりづらいので、両手でのハンドリトリーブで手前まで引いてきたら最後にロッドをスーッっと動かしてフライを引きながらピックアップしたい。リトリーブの途中で止めたり急な速度変化を与えたりするのは厳禁で、そのような泳ぎだとフッキング以前に極端にバイト率が落ちる。

合わせは魚の重みが乗ってからで問題ない。ザバっ!と水面が炸裂するとびっくりしてロッドで合わせたり手が止まったりするが、出ても乗らないことのほうが多いのでそのままリトリーブを続けることが重要。乗らなければ追い食いしてくるし、何よりリトリーブを止めると見切られてスレてしまうし、ロッドであおってしまうとラインで水面を荒らしてしまう。湖の引っ張り同様にそのままリトリーブして魚の重みを感じたらラインを引きながらロッドをあおって合わせる。

バチが広範囲に抜けているときはオープンウォーターに適当に投げても出るが、足元に明暗がはっきり出ているポイントではピックアップ寸前に水面が炸裂することも多いので最後まで気を緩めないでほしい。

潮がかなり速い場合はほっとけメソッドでアップクロス〜ダウンクロスで流すことでもバイトを得られないこともないが、流れがそんなに速くないあるいはほとんどない場合はほっとけメソッドはあまり効果がないので要注意。河川や干潟に生息するバチは遊泳力のない水中流下タイプのバチのためドリフトが効果的だが、積極的に泳ぐバチがメインの運河では単純なドリフトでの反応が鈍い。

引き波パターンにはもうひとつ重要な点がありそれはレンジだ。引き波バチには大きく分けると2種類おり、水面から頭を出して蛇のように泳ぐタイプ、あまり顔を出さずに泳ぐタイプがいる。前者は目立つので多少暗くてもすぐにわかるが、後者はある程度明るい場所でないとわからないかもしれない。この2種類が混在して抜けている場合もあるし、どちらか1種類がメインという場合もある。シビアな状況だと引き波を合わせないと反応が鈍い。大きく引き波が出るタイプ、あまり出ないタイプというように、フライパターンを準備して挑みたい。

クルクルバチパターンを制するものが運河筋のバチ抜けを制する

さて、ここまでは主に引き波を出すタイプのバチパターンについて解説してきたが、重要な話をしていない。そう、クルクルバチだ。

バチ抜けシーズン後半になると、水面下をクルクル回る小型の遊泳力のあるバチが幅を利かせてくる。引き波バチが出る前や出終わった後、小潮や長潮といったダルい潮回りでもこのクルクルバチは出現するので時合が長い。特にシーズン後半の運河筋では最重要種のバチになるのでこのパターンは必携としたい。

水面を泳ぐこともあり、その場合はごく小さな引き波を発生させているが、基本的には水面直下〜やや深めのレンジをクルクルまわりながら忙しなく泳いでいる。その予測できない泳ぎからトリッキーバチとも呼ばれる。大きさは1-4cmほどで、水中にいるときはピンク・オレンジっぽく見えるが、見慣れていないと小さなベイトフィッシュにしか見えないだろう。

このバチを捕食しているシーバスを通常の引き波系パターンで釣るのは難しい。釣れないわけではないが格段にバイト率が落ちる。ボイルはあるけど激しくない、シーズン後半、引き波系バチが抜けるタイミングの前後、あるいは、水面直下でシーバスが反転しているようならクルクルバチを捕食していると思ってほぼ間違いないが、時期的にアミの場合もあるので、渓流のライズゲーム同様に捕食物はよく観察したい。

クルクルバチパターンは小さいこともあり、ボイルしたところにダイレクトにキャストしないと気が付かれず反応しないことが多い。シーバスが群れている・あちらこちらに散っていると思われる場合は引き波パターン同様に適当に投げても食ってくるが、シーバスが固まっていると思われる場合はボイル狙い撃ちを原則としたい。

クルクルバチパターンは少し速めのショートストロークをメインに、時々ロングストロークやリトリーブスピードの強弱をつけながらリトリーブする。狙うレンジは水面直下で問題ないので、着水後すぐリトリーブしよう。引き波パターンのように一定のスピードでゆっくりリトリーブする必要はないが、リトリーブ中のポーズの時間はできるだけ短くしたいので(つまり、停止しない減速→加速のイメージが正しい)、やはり両手でリトリーブをおすすめする。ラインハンドでのリトリーブがNGというわけではないが、その場合は手が止まっている時間を作らないようにしたい。スースースーという動き、あまり止まらないベイトフィッシュのような動きを意識するとイメージしやすいかもしれない。

バイトはゴン!ドスン!ガツガツ!のように手元に伝わるので、引き波パターン同様にそのままリトリーブして魚の重みを感じたらラインを引きながらロッドをあおって合わせる。引き波パターンと比較してフッキング率はかなり高い。

このクルクルバチパターンを制する者が運河筋のバチ抜けを制すると信じて疑わない。
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リーダーやティペットは引き波パターンのときはナイロン一択、クルクルバチパターンはナイロンでもフロロでもOK

バチ抜けのときのラインシステムだが、水面勝負の引き波パターンはもちろん水面下を引っ張るクルクルバチパターンもフローティングラインで問題ない。リーダーやティペットは引き波パターンのときは沈ませない理由とショートバイトでのフッキングミスを避けるためナイロン一択、クルクルバチパターンはナイロンでもフロロでも構わない。

オフシーズン中のエントリになってしまったが、来春はぜひともバチ抜けシーバスを楽しんでほしい。なお、漁港も同様だが運河も立入禁止や釣り禁止や投釣り禁止(この場合はオーバヘッドキャストは不可なので、ペンデュラムキャストのようにループをアンダーで作るかロールキャストもしくはテクトロに限定される)が増えているので十分注意してほしい。Underwaterではバチ抜けシーバスのガイドを行っているので、勝手がわからない方はぜひどうぞ!