2023/06/07

南の島でのフライフィッシングによるトロピカルフィッシュ五目釣りのコツ


Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言
 

奄美や沖縄本島、宮古島石垣島など、南の島フラットでの本命はトレバリーであり、対抗としてトリガーだろうか。どちらも簡単ではない上に、ガチで狙っても遠征中に1匹も手中に収めることができないという結果になることも珍しくない。

トレバリーのクルージング待ちやトリガーのテーリング待ちで手持ち無沙汰のときに相手してくれるのが、フラットに生息する小型魚だ。多くは20-30cm程度、まれに40cm超程度のサイズということもありどうしても外道扱いされることが多いが、南の島特有の色彩豊かな魚種が楽しませてくれる。潮位が高めの場合はブラインドが主体になるが、干潮前後や状況によっては魚体を確認できるので、サイトフィッシングでも楽しめる。

ムラサメモンガラ、マトフエフキ、カンモンハタ…癒やしの五目釣り

ムラサメモンガラ、マトフエフキ、カンモンハタ、モチノウオ、オジサン、コーフ...何が釣れるかわからないのも魅力である。十数センチほどの魚もたくさんいるが、フライをかなり小さくしなければならないのと、そこまでしてわざわざ狙うほどのサイズではないのでここでは対象外としたい。

フラットにはサンドフラット、マディフラット、リーフフラット、それらの混在など、ボトムのマテリアルに応じて多彩なポイントが広がり、明るい水色も相まって魚がたくさんいるように感じる。南の島なら簡単に釣れるだろうと思ってしまうが、実際にはそう簡単ではない。 サンドフラットでもマディフラットでも魚はいるが、サンゴやウィードなどの混在ボトムを除き五目釣りにはあまり向かない。いかにもといったトロピカルフィッシュを釣りたい!と思うならリーフフラットを強くおすすめする。サンドフラット、マディフラットよりポイントを絞りやすく、魚種も豊富だからだ。おそらく皆さんの頭の中で想像している南の島での釣りのイメージそのものになるだろう。イメージは南の島での五目フライフィッシングをどうぞ!

フラットでは「変化」を狙おう

コバンアジやコーフのように移動を繰り返す魚もいれば、ムラサメモンガラやカンモンハタのように定着性の強い魚もいるのでポイントを一括りにはできないが、どちらの魚を狙うにしても最重要要素として考えなければならないのは「変化」である。

潮の流れや潮目(ウェーディングしているときに感じる水温の変化やスカムラインで判別できる)、岩やサンゴ、ウィードなどのストラクチャー、カケアガリや窪み、ボトムマテリアルの違いなど、これらすべて「変化」として捉えたい。その「変化」に潮の流れが加わっていれば一級ポイント間違いなし。潮通しの良い場所は良型の強い魚が多い。

「変化」というと何やら難しく思えてしまうが、渓流や湖でのポイントの見極めと全く同じ。南の島だとどこにでも魚がいるように錯覚してしまうので、いつも以上に「変化」を意識したい。

魚が着くのはこうした「変化」なので、フライを投入するのは「変化」に絞りたい。適当に投げても釣れないことはないが、無駄なキャストが増えることで魚が警戒してしまうのでおすすめしない。

また、ポイントに近づきすぎるのもよくなく、10メートルは離れて狙いたい。渓流以上、フラットのサイトフィッシング未満の距離感といえばイメージしやすいかもしれない。もっとも、コントロールできる範囲で距離は取ったほうが有利なことは間違いない。

ド干潮以外では魚影を確認するのが難しいことが多いのでアプローチは気が緩みがちだが、五目釣りと舐めてかかると痛い目に遭う。移動するときはバシャバシャ音を立てるのではなく、ソロリソロリと足を運びたい。活きたサンゴが多い場所では踏み潰さないように、サンゴの間を縫って歩いてほしい。サンゴの上には決して乗らないこと。このあたりは通常のフラットフィッシングと同じ。

強すぎじゃないか?と思ってしまうが8番ロッドが最適

タックルに関して。サンドフラットやマッディフラットならほぼ根もないので6番で問題ないが、いかにもといったトロピカルフィッシュが生息するリーフフラットでは8番は欲しい。リーフに生息する多くの魚種はファイト中にサンゴの穴やウィードに突っ込もうとするのと、フッキング直後のファーストランをかわすためにもバットパワーが必要だ。トレバリーやトリガーを狙っている合間の五目釣りならそれ相応のロッドを使用していると思うので問題ないだろう。

ラインはフローティング、リーダーはナイロンで全長は9-12フィート程度、ティペットはフロロ20ポンド一択でよい。経験上ティペットを細くしたところで釣果が変わる印象はない。根掛かりや根ズレ、歯による損傷を考えると魚の大きさに対して太めを推奨したい。トレバリーやトリガー狙いならティペットそのままでフライだけ変えれば済むという理由もある。なお、ド干潮あたりのスネ下潮位の場合は、クリアティップのラインもしくはリーダー長めをおすすめしたい。

ロッド8番+ティペット20ポンド+小さくても太軸のフライフックなら不意にトレバリーや大型トリガーが現れてもそのまま狙うことができるので、安心して五目釣りに専念できるだろう。

なんでも釣りたいならフックは小さめがおすすめ

フライは太軸の#8前後が理想。ゲイプ幅でいうとTMC811S換算で#8、管付き伊勢尼換算で7-8号あたりか。それより大きいサイズ、例えば#4や#2でも食ってくるフエ系・フエフキ系やハタ系のような魚はいるが、ムサラメモンガラやモチノウオのように魚体の割に口の小さい魚も多いので、特に狙う魚が定まっておらずとりあえずなんでも釣りたいなら小さめをおすすめする。

また、口の硬い魚も多いので細軸フックは避けたほうが良い。細い分刺さりは良いが、ファイト中やフックを外すときに折れたり曲がったりするのと、根掛かりした場合の回収率が極端に下がる(太いティペットで太軸のフックなら回収できることが多い)。小さくても8番ロッドを絞り込むパワーがあるので侮ってはいけない。

サンドフラットやマッディフラットではなくリーフフラットの場合はフライにガードは必須。サンゴは想像以上に引っかかりやすい。なお、エダサンゴに引っかかっているとわかっている場合は、ラインを引っ張らずに手で外しに行こう。エダサンゴはとても折れやすい。

使用するフライや狙う魚、ポイントにもよるが、スースー、チョンチョンのような喰わせの間を入れる単純なリトリーブでよい。サンドフラットやマディフラットならボトムトレースでよいが、リーフフラットはボトムを取る必要はないのでストラクチャー脇の中層を泳がすイメージでよい。

なお、リーフフラットの場合はサンゴや岩のすぐ脇を通したい(サンゴの窪みを狙う場合はエッジ付近の窪み側)。ウィードの場合も脇でよいが、ウィード上端と水面の間がある程度ある場合はウィードの真上を通すこともおすすめしたい。

魚種別のポイント違いだと、ムラサメモンガラやマトフエは砂地にウィードとサンゴや岩が絡む場所。モチノウオやオジサンもムラサメモンガラやマトフエと同じようなストラクチャーにいるが、ムラサメモンガラよりやや潮通しの良い場所を好むので、流れのあるチャンネル付近やリーフエッジに近い沖目がよい。ムネアカクチビも潮通しのよい場所。カンモンハタは潮間帯より下に多いので、波っ気の少ないやや水深のある根を狙おう(ド干潮の水深20cmでも根があれば居る)。

また、下げからド干潮はボトムの窪みに魚が溜まりやすく、上げのときはチャンネルから魚が差してくるので積極的に狙いたい。それと潮位が若干高めのときに現れる潮目付近も重要で、ゴミが集まっている筋や水温が急に変わる付近は魚が溜まりやすい。

潮位的には低めが狙いやすく、個人的にはナーバスウォーターを出しながらストラクチャー周りをウロウロするムラサメモンガラをサイトで狙いやすいド干潮潮止まり前後が一番楽しいと感じる。

きちんとターンオーバーはさせること

いずれにせよ、テーリング狙いのようにアキュラシーに神経質になる必要はないが、きちんとターンオーバーはさせたい。浅い分ループが乱れたままの着水はやはり警戒されやすいのと、落パクで喰ってくるときもあるからだ。

バイトは比較的明確で、ゴゴゴ!やドスン!という感じで手元に来るので、そのまま2-3回ストリッピングで合わせてからロッドで追い合わせするイメージでよい。バイトの瞬間にロッドを立てるとバレることが多い。このあたりはテーリング狙いのクロダイ、トリガーはもちろんのこと、湖での引っ張りと同様。リーフフラットの場合はフッキングしたらすぐに寄せにかからないと根に入られるので注意、ランディング寸前までは油断できない。

歯の鋭い魚や棘のある魚が多いのでランディング時はフィッシュグリップを使うか、余裕があればネットで掬いたい。毒魚もいるので同定できない怪しい魚がつれたら直接触らないようにしたい。

根掛かりした場合は糸を切らずに可能な限り回収してほしい。五目釣りの場合は潮位が低いときに行うことが多いので、フライを回収することは容易だ。 

ストラクチャーに逃げ込まれた場合はラインのテンションを抜いてしばらく放置していれば魚のほうから出てくるので、無理に引っ張らないようにしたい。どうしても出てこない場合は魚体を掴んで引っ張り出そう。ムラサメモンガラのように棘のある魚は棘で、カンモンハタのような根魚は胸鰭で引っかかっているので、棘や鰭を掴んで折りたためば抜ける。

なお、手で引っ張り出す場合、魚が確認できているなら問題ないのだが、見えない場合は噛まれないように注意。フッキングした魚以外にも攻撃してくる魚や毒魚などもいるので注意してほしい。少なくとも素手ではなくグローブを嵌めた状態をおすすめする。

貴重な資源なのでリリースしてほしい

それと、強要するつもりはないが、いずれの魚もリリースを前提としてほしい。特にカンモンハタのような成長が遅くテレトリー意識の高い魚に与える影響はとても大きい。

いかがだろうか。

標準的なタックルに関しては上述したとおりだが、各々好きなタックルで楽しんでほしい。特にフラットシューズを履いた状態でくるぶしくらいの低潮位の場合は5番前後の軽いラインのほうがラインインパクトも少なく場を荒らしにくい。私自身、4番のグラスロッドで楽しむこともある。

よいポイントに当たると連発するので、トレバリーやトリガー狙いの合間だけに留めず、トロピカルフィッシュを専門に狙うのも大いにありだ。観光ついでに短時間で楽しめるので、ガチ釣行がなかなか叶わないお父さんが家族サービスの合間にチョイ釣りをしたり、普段渓流しかやらない人にも最適だろう。そうした釣りなら管釣り用の5番前後のタックルで十分楽しめる。沖縄出張ついでの「出釣」にも相性がいい。

南の島での五目フライフィッシングをどうぞ!

トロピカル五目釣りに限った話ではないが、最後に注意点をひとつ。

多くの場合はレンタカー含め車での釣行になると思うが、車を停める場所に注意したい。南西諸島は観光地化が進み私有地への違法駐車や海岸への乗り入れが問題になっている(特に宮古島・伊良部島、石垣島)。首都圏近郊の漁港ほどではないが、以前駐車できた場所が駐車禁止や進入禁止になったり変化が激しい。

不安ならポイントから離れた場所でも公共の駐車場に停めるか、近くに止められる場所がないならいっそ諦めるくらいの心構えで挑んでほしい。

「ここいい感じだなぁ〜」と思っても近くに車を停める場所が見当たらないことも多いので、現地住民に訊くのもありだ。その方が釣りをする人なら有益な情報も聞き出せるかもしれない。