2020/11/26

シンクレートの高いフルシンキングのラインがナイトゲームに向かない理由

Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言

フルフローティングにしろフルシンキングにしろWF構造の場合、一般的には前半9m前後のヘッドがあり、後半は一段細くなったランニングラインがつながっている。

ご存知の通り、ヘッドの重さは規格(AFFTA)で定められており、テーパーのないティップを除外した先端30ft(9m)の重さでランク付けされている。たとえば#4ラインなら許容範囲はあるが7.8g/120gr。

水に浮くフローティングラインと水に沈むシンキングラインの重さ(質量)は同じ

誤解する人は多いが、同じ番手なら、水に浮くフローティングラインと水に沈むシンキングラインの重さ(質量)は同じ。変わるのは体積や密度であって、質量が変わることはない。つまり、

質量 = 体積 x 密度

シンクレートが高いからといって重くなるわけでもない。同じ番手ならタイプ1とタイプ6のヘッド重量が変わることはない。もちろん、同じ番手でもラインメーカーやシリーズごとに微妙に重さが異なるので、違う銘柄だとまったく同じということにはならないが、それでも番手ごとの許容範囲であれば誤差の範囲内なのでその差は考慮しなくてよい(ただし、近年多い、意図的に規格を逸脱させたラインを除く)。

同一番手なら重さ(質量)は変わらないということを前提とし、

「物体は水に沈んでいる部分の体積が大きいほど浮力は大きい」

というアルキメデスの原理で考えた場合、浮力を得たいフローティングラインは体積を大きくし(密度が小さくなる)、沈ませなければならないシンキングラインはシンクレートが高くなるにつれて体積を小さくする(密度が大きくなる)のがライン設計の原則となる。

質量 = 体積 x 比重

でもある(標準物質を4℃の水とした場合)。ラインメーカーやシリーズごとに使用するコアやコンパウンドも様々で、各々比重も異なる。フローティングラインには浮力材を混入したり気泡を設けたり、シンキングラインには鉛やタングステンの粉末を混入したりして比重を調整している。ちなみに、フローティングラインの比重は一般的には0.9程度といわれている。

これらの考え方に基づいてフルシンキングのフライラインを作ると、通常はシンクレートが高ければ高いほどヘッドが細くなり、ヘッドとランニングラインの段差が少なくなる。

前置きが長くなったが、本題に入ろう。

フローティングあるいはシンクレートの低いインタミのようなラインならヘッドとランニングラインの段差は目視でも指の感覚でも容易に判断できるだろうが、シンクレートが高いと段差が少なくなるので、目視や指の感覚で境目を判断するのが難しくなる。シンクレートが高いほどダークカラーに塗られているものが多いため、暗闇だと余計にわかりにくい。タイプ6くらいになるとそれが顕著だ。漁港のライトゲームで使うような低番手のラインはもともと細いので、より困難になるだろう。

シンクレートの高いフルシンキングのフライラインは暗闇だとヘッドとランニングラインの境目がわかりにくい

昼間ならロッドティップから出ているヘッドの長さが目視できるので、ヘッドとランニングラインの境目がわからなくてもリリースポイントは容易に判断できる。問題は夜間だ。シンクレートの高いフルシンキングに慣れていれば暗闇でリリースポイントを目視できなくても、あるいは、境目が指の感覚でわからなくても、ロッドにかかる負荷で判断できるが、慣れていない人にとってはそれは難しいだろう。ラインを出しすぎてしまい、フォルスキャストでラインを保持できずにループがグダグダになってしまうケースが多い。

それが、シンクレートの高いフルシンキングのラインに慣れていない人がナイトゲームで使うことをあまりおすすめしない理由。

シューティングラインなら夜間でもヘッドとランニングラインの継ぎ目がガイドに当たる感触ではっきりわかるので、慣れるまではシューティングシステムでの釣りをおすすめしたい。

もちろん、慣れたあとでも棚が頻繁にかわるカマスやアジを狙うなら、シンクレートを変えやすいシューティングシステムはおすすめ。ただし、例外はある。堤防の足元を狙う場合はもちろん、堤防に腰を下ろして粘る場合など移動しないときは、シューティングシステムではなくフルシンキングのタックルをシンクレートごとに用意して使い分けたほうが手返しがよい(過去、ボートでブラックバスをルアーでやっていた人なら共感していただけるだろう)。ヘッドの交換は意外と時間がかかり、時合を逃すことが多い。

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